7冊目『オイディプス王』・『アンティゴネ』ソポクレス 福田恆存 訳
こんにちは。今回紹介する本は『オイディプス王』と『アンティゴネ』です。世界史の授業で名前だけは耳にしたことがあったのですが、内容を全く知らなかったので読んでみたいと思いました。
また、「ソポクレス」より「ソフォクレス」の方が聞き馴染みはあると思うのですが、タイトルにおいては本の表記通りに「ソポクレス」と表記いたしました。
あらすじ
いつものように背表紙のあらすじを使いたかったのですが、ネタバレが激しいため今回は僕自身で書きます。
オイディプス王
テバイという国の王となったオイディプスはアポロン神殿の神託を受け、前王ライオスを殺害した犯人を探すことになります。犯人を探しているうちにオイディプスは自身の悲惨に呪われた運命を知っていくことになります。
アンティゴネ
オイディプスの娘であるアンティゴネは国の掟を犯し、反逆者である兄を弔います。国の規則を破ってまでも情を大切にしたアンティゴネとそれを取り巻く人々の姿が描かれる慈愛に満ちた話です。
感想(ネタバレなし)
古代ギリシャの三大悲劇詩人ソフォクレス
ご存じの方も多いとは思いますが、作者であるソフォクレスはアイスキュロス、エウリピデスと並ぶギリシャの三大悲劇詩人の一人です。そのため、この本は小説というより戯曲と呼ばれる類のものであることを初めに言っておきます。
三大悲劇詩人。 そう聞いたとき、2000年以上もの遥か昔の人が書く悲劇とは一体どのようなものなのか興味深く思いました。読んでみると、「悲しい」というよりも「悲惨」な内容でした。
格式高い文体
戯曲ということもあり、ほとんど登場人物らのセリフで構成されていて、それは非常に格式高い文体で訳されています。正直、読みにくい、内容を咀嚼しにくいとも感じました。
しかし、逆にこのブログのような文体で書かれていたらどうでしょうか?もしそうだとしたら興ざめしてしまいますよね。若干の読みづらさはありますが、文章が格式高く書かれてるからこそ世界観が伝わります。
また戯曲なので、ほとんどがセリフで構成されています。したがって変に理解しやすいような口語体ではなく難しい言い回しで書かれているのは当たり前ともいえます。内容が咀嚼しにくいだけで理解はできるので安心してください。
感想(ネタバレ含む)
オイディプス王
悲惨の一言に尽きる内容です。神に告げられた悲惨な運命を回避するためにライオス、オイディプス共に自分の意に反した選択をしました。しかし、その選択によって神に告げられた通りの運命を呼び寄せてしまいます。神に抗うことは結局できませんでした。古代ギリシャの観念が表れてます。
悲惨な内容について書きます。オイディプスは知らず知らずのうちに、父親を殺し母親を自分の妻にします。「”知らず知らず”ってどういうこと?」と思うかもしれませんが言葉の通りです。
オイディプスがすべての事実を知った時の感情は筆舌には尽くしがたいです。彼は絶望して自分の両の眼を潰してしまいます。彼のこの上なく悲惨な姿には読んでいて胸が痛くなりました。
すべて仕組まれていたようなオイディプスの人生ですが、もしかしたら自分が生きているこの世界も同様に、全てあらかじめ予定されていた通りに動いているような気もします(そんなことはおそらくないんでしょうが笑)
アンティゴネ
この話も悲惨です。アンティゴネはオイディプスの娘というだけで悲惨なのに二人の兄も失います。しかもその二人の兄は互いに殺し合って死んでしまいます。国の敵となった方の兄は弔うことが許されませんでした。
それでも、王の命に背きアンティゴネはその兄を弔います。国の掟より自分の信条を大事にしたのです。そのことが王に知られて、アンティゴネは罰せられます。最終的には、アンティゴネ、その婚約者で王の息子、そして王の妻までもが自殺してしまいます。
これもまた悲惨ですよね。王は「死者を弔わない」という自分の判断は良くなかったことを知り、アンティゴネへの罰を取り消そうとしたのですが手遅れでした。王、死んだ人たち、残されたアンティゴネの妹、だれも幸せになれないという結末です。
あまりにも人が死にすぎて正直引いてしまいました。こんなに死なせる必要があったのでしょうか。「死」への考え方が昔と今とでは違うのかもしれませんね。
主要な登場人物たちは皆、自分の信条を貫こうとしました。その結果が悲惨な末路です。誰も報われることがなく非常に残酷です。古代ギリシアにおいても仏教でいう一切皆苦のような思想があったのかなと思いました。
最後に
繰り返しにはなりますが、2000 年以上昔においてもここまでの悲劇が作られていたことに驚いたというのが一番の感想です。両編合わせて200ページくらいの短い話なので気軽に読めると思います。興味のある方は是非どうぞ!